この記事で伝えたいこと
POPに情報をたくさん入れても、「そもそも何の話なのか」がパッと見で分からなければ伝わらないことがあります。
今回、店頭POPを作っていて気づいたのは、作っている本人には見えている「前提」が、見る人にも同じように見えているとは限らない、ということでした。
事の発端は、エコキュート売り場に貼るPOPを作っていたときのことです。
自分では、それなりに分かりやすく作れたつもりでした。でも、いざ見てもらったときに返ってきたのは、「これ、エコキュートって分かりにくいね」という一言だったんです。
言われた瞬間は、「え、こんなにしっかり書いてあるのに」とは思いませんでした。
言われてみれば、たしかに……。
必要な情報は入っている。一番伝えたかった「6万円分」という文字もかなり目立っている。それでも、POPだけを単体で見ると、何かが決定的に足りなかったんです。
その理由を考えていくうちに、昔、上司からよく注意されていた「主語が抜けているぞ」という言葉まで思い出しました。
最初は「6万円分」が伝わればいいと思っていた

今回作っていたのは、エコキュートの交換とポイント制度をご案内する店頭POPです。
自分がとにかく一番目立たせたかったのは、「6万円分ポイント」という部分でした。
2026年の「とやま省エネ家電購入応援キャンペーン第4弾」では、対象となる高効率給湯器のポイント交付額は3万円分。さらに、地域協力店で購入した場合は交付額が2倍になります。
※制度内容は2026年8月14日時点。対象製品や条件、受付状況については富山県「とやま省エネ家電購入応援キャンペーン第4弾」をご確認ください。予算上限に達した場合は、期間内でも受付終了となります。
地域協力店であることを、売り場の違いとしてしっかり見せたい。
「だったら、とにかく6万円を目立たせよう」
そんなところから、POPを作り始めました。

作った時のイメージ画像
だから初稿では、「6万円分」という数字をかなり大きく配置したんです。作り終えたときも、その出来栄えには満足していました。
「6万円という文字がちゃんと飛び込んでくる。これならいいんじゃないか」
そんな感覚でした。
そもそも、このPOPは店頭に展示してあるエコキュート本体に直接貼る予定でした。
目の前にドーンとエコキュートがあって、その横にこのPOPがある。それなら、わざわざ説明しなくても何についてのお知らせなのかは伝わるだろう。
自分の中では「商品」と「POP」が、最初からセットになっていました。
「エコキュートって分かりにくい」と言われた

ところが、いざPOPを見てもらうと「エコキュートって分かりにくい」と指摘をもらいました。
そこで、商品をいったん忘れて、POPだけを切り離して見てみたんです。
たしかに、6万円分ポイントがもらえることは分かる。でも、何をしたら6万円分なのかが分からない。
地域協力店であることも、ポイントについても書いてある。左上には、それっぽいエコキュートのイラストも入れていました。
決して、情報が足りないわけじゃないんです。
でも、「これはエコキュート交換についてのPOPですよ」という最初の入口が、自分が思っていた以上に弱かった。
「一番伝えたい情報を目立たせること」と、「何についての情報なのかが伝わること」は、別の話でした。
僕は「6万円を目立たせる」という優先順位にとらわれるあまり、その前にあるはずの「何の6万円なのか」を飛ばしてしまっていたことになります。
POPデザインが伝わらなかった理由は「前提」にあった
なぜ作っている最中に気づかなかったのか。
理由の一つは、左上にエコキュートのイラストを入れて、安心していたからです。
今の自分なら、その形を見ればすぐに「ああ、エコキュートね」と分かります。
でも、そこでふと思い出しました。
僕自身、今の会社に入るまでは「エコキュート」というものをほとんど知りませんでした。
今なら、貯湯タンクとヒートポンプを見れば「あ、エコキュートだ」と分かる。でも以前の自分が同じイラストを見て、それが何なのかスッと理解できただろうか。
たぶん、分からない。
もともと知らなかった側にいたはずなのに、いつの間にか知っている側の視点だけで作っていたんですよね。
専門知識というほど大げさなものではありません。ただ、一度知ってしまうと「これくらいは言わなくても分かるだろう」という前提が、自分の中では当たり前になっていく。
知らなかった頃の自分なら、これを見て分かるだろうか。
今回足りなかったのは情報そのものより、「自分が持っている前提を、相手も持っているとは限らない」と疑ってみる視点だったのかもしれません。
昔言われた「主語が抜けている」を思い出した
このことをグルグルと考えていて、昔の上司によく言われていた言葉を思い出しました。
「お前は主語が抜けている」
昔から、文章を書いたり人に説明したりするとき、僕はつい「何について話しているのか」を無意識に省いてしまうクセがあったようです。
本人の頭の中では話がつながっているから、何が抜けているのか自分では気づきにくい。でも相手からすると、「え、急に何の話?」となってしまう。
日常の会話なら、その場の空気や指さした先で補えることもあります。
「これ」「あれ」「さっきのやつ」でも、お互いが同じものを見ていれば成立しますからね。
でも、POPやバナーを初めて見る人には、その前後の「会話」がありません。
今回のPOPで一番大きく書いたのは「6万円分ポイント!」でした。
ただ、その前にあるはずの「エコキュートを交換すると」という部分が、あまりにも弱かった。
今回のPOPを文章にしてみると
「エコキュート交換なら、6万円分ポイントの対象になるよ」
初稿では、この前半部分よりも「6万円分」ばかりを大声で叫んでいました。
文章なら「主語がないよ」と気づけるのに、デザインになると途端に気づけなくなっていた。
デザインにも「主語」みたいなものが必要なのかもしれない。
今回の失敗を、自分の中ではそんな言葉で整理することにしました。
伝わるPOPにするため「何の話か」を先に見せた

修正版では、上部に「給湯器・エコキュート」、さらにメインとして「エコキュート交換」という言葉を大きく入れました。

ブラッシュアップしたPOP
イラストにもエコキュート本体を追加して、細かい文字を読まなくても「何についてのPOPなのか」が分かるように変更しています。
とはいえ、文字情報そのものはあまり削っていません。
編集している途中では、
「うーん、まだちょっと詰め込みすぎかな」
とも感じていました。
だから修正版が、POPデザインとして完璧な仕上がりになったとは思っていません。
それでも初稿よりは、「何についての6万円なのか」という最低限の入口は、かなり見えやすくなりました。
今回、自分にとって一番大きかったのは、文字を大きくしたことでも、イラストを増やしたことでもありません。
「何の話なのか」という入口を足したこと。
そこだった気がします。
POPデザインが伝わらないとき、自分なら3つだけ見直す

今回の修正を経て、「次にPOPを作るときは、最低限ここだけでも確認しよう」と思ったことがあります。
難しいデザインのセオリーをたくさん覚えるというより、今回僕自身がつまずいた経験から見えてきた3つの確認ポイントです。
- 何の話なのか:その商品やサービスを知らない人が見ても、何についてのPOPなのか分かるか
- 何を一番伝えたいのか:今回なら「6万円分ポイント」がパッと見で目立っているか
- その2つがちゃんとつながっているか:「エコキュート交換で6万円分」のように、情報同士の結びつきが見えるか
初稿の僕は、2つ目のことばかり考えていました。
とにかく「6万円」を一番目立たせる。
そこ自体は、たしかにできていたと思います。
でも1つ目の「何の話なのか」が弱かったせいで、見る人の中で「エコキュート交換」と「6万円分」がうまくつながらなかった。
情報を減らす、色を変える、文字を大きくする。
そういう調整を始める前に、まず「何の話か」が見えているかを確認する。
今回の自分には、その確認が一番必要でした。
これは店頭POPに限らず、Webサイトのファーストビューやバナー、SNSの画像を作るときにも使えそうです。
作ったものを一度だけ「単体」で見てみる
「何の話なのか」「何を伝えたいのか」「その2つがつながっているか」。細かいデザインを全部直そうとすると難しくても、この3つだけなら、自分にもサッと確認できそうです。
Webデザインの参考サイトを見るときにも、似たようなことを考えるようになりました。「すごい」で終わらず、自分の制作に何を一つ持ち帰れるかを考えた話は「Webデザインの参考サイトはどこを見る?「すごい」で終わらせない3つの視点」でも書いています。
おわりに
今回の修正は、劇的なビフォーアフターというほど大きな出来事ではありません。
POPを一枚作って、指摘をもらって、少し直した。ただそれだけのことです。
でも、「自分には見えているから、相手にも見えているだろう」という思い込みは、これからも普通にやってしまいそうな気がします。
昔は文章で「主語が抜けている」と言われ、今回はデザインで似たようなミスをやらかした。
人に何かを伝えるとき、僕はどうやら「自分の中にある前提」を省いてしまいがちなようです。
たぶん、これからも同じような失敗をすると思います。
そのときに今回のPOPをふと思い出して、
「これ、何の話かちゃんと指させているかな?」
と一度立ち止まって見直せれば、それくらいでちょうどいいのかもしれません。
この記事で残したい4つのこと
今日のまとめ一行
一番伝えたいことを目立たせても、「何の話なのか」という主語が抜けると伝わりにくい。作る側の前提は、見る側には見えていないことがあります。
今日できる一歩
作ったPOPやバナーを一度だけ単体で眺めて、「何の話なのか」「何を伝えたいのか」「その2つがつながっているか」を確認してみる。それくらいなら、次からできそうです。
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